異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

After COVID19

任期間近のトランプ大統領の動きが怪しい。任期中に「核のボタン」を押すのではないかとだいぶ前に懸念したことがあったが、わりと雲行きはよくないと思っている。

自分のチカラを示すことに余念のないトランプ大統領のことであるから、大きな最後っ屁を考えていても何ら不思議ではない。ただし実質的な権力は失いつつあるので、周囲がどこまで従うかは定かでない。米国は良識ある人材も豊富にいるので、ラストストッパーの行動を信じたい。

 

さて、1月20日を過ぎて世界が核の恐怖から一時的に逃れたとしても、コロナ禍は続く。米国では日あたりの死者数が4,000人を超えていると聞く。

日本は新規感染者が2,000人超なので相対的な被害は少ない方であるが、それでもまったく油断はできない。感染力が1.7倍のCOVID19の変異種が登場しているし、現在開発されたワクチンもいつまでも効くとは限らない。変異のスピードは人から人へ感染すればするほど早くなるであろうから、GoToなんとかを一時停止している日本でも再開すれば、一気に広がりかつ変異種の登場に拍車をかけることであろう。ワーストケースはワクチンの効果が薄い感染力と致死性の高い変異種を登場させてしまうことだ。

政府がだいじにだいじにしている経済活動なんかを語るヒマもなくなる。閣僚のみなさまは大人数での「会食」が大好きなようなので、大いに感染を広げて経済縮小に貢献してくれることでしょう。バカな行動はほんとに謹んでほしい。

 

多少前回の続きとなってしまうが、日本が今後進んでいく道をもう少し深堀りしてみたい。一時栄華を誇った大英帝国は植民地を失いながら徐々に衰退してきたが、近代に入ってからは少し持ち直しながらも、その凋落は進んでいるように思える。「衰退していく国」という文脈において、日本が同様に辿っていく点も多くあるのではないだろうか。

英国の工業製品の多くは隣国や海外で生産され、国内で生産しているものは少なくなっていった。特に大量生産されていた日用品は海外で生産するようになり、今では国内のものは生産終了となり、骨董品扱いされているものも珍しくない。海外生産されたもののほうが質・量ともによく、国内生産する価値がなくなったのだ。

日本でもすでに同様の現象が起きているが、Amazonなどを見るとまだ「中華製は買わない」とかMade in Japanにこだわっているレビューをみかけることがある。

これは遠からず間違えた認識になると思う。「安かろう悪かろう」→「多少性能は落ちても安くて使える製品」→「日本製よりも安くて質もよい製品」に中国製品は日々進化している。問題はこの現実を直視せずにいつまでも過去の栄光にすがっている日本人が数多く存在している事実だ。自分たちの置かれている現実をまっすぐ真摯に見ることからしか立ち直りはありえない。たとえそれが見たくない現実だとしても。「日本スゲェー」の妄想に浸っているかぎり、世界からおいて行かれるスピードは指数関数的に加速していく。

 

英国の社会インフラは好意的にとってもひどいものだが、日本もこれに倣う日も近いと思っている。

電車の遅れが少ないことが日本の自慢話としてよく上がる。配送物も時間指定で配達される。停電や水漏れも少ないし、道路に穴が空いていることもほとんどないし、高速道路にモノが落ちていることを見かけることも少ない。(トンネルの崩落事故はあったが)

近い将来、これも在りし日の栄光として語られることだろう。日常生活では気づかないレベルで少しずつサービスの質は落ちていくと思われる。ポテトチップスだったか、値段が変わらず、いつの間にか内容量が少なくなっていたことがあったが、これと同じように気づかないレベルで進行していく。あるときふと気づくと隣国の生活水準のほうがはるかに豊かになっている現実に驚くことだろう。

 

ただ悪いことばかりでもない。人は利便性に侵食され過ぎるとそれに依存しがちになるが、利便性が消えれば自分である程度工夫する。ないものは自分で創るしかないし、努力でどうしようもない現実は受け入れいるしかない。恥も外聞もなく、生き残るには自分でなんとかしなければならない状況下に置かれれば人は創造的になれる。

電車が遅れるのが当たり前になってしまったら、他の手段を確保するよう動く。また多少の遅れについても、人はとやかく言わなくなるだろう。だって遅れるのは「当たり前」な世の中なのだから。

少し遠い将来の日本では「きっちり」と「ギスギス」した空気はやわらいでいると思う。現実を受け入れる姿勢は人をおおらかにもするだろう。そのようになったとき、はじめて日本は谷間を脱出する一歩となるのではないだろうか。