異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

Contaminated Waterの海洋放出に思うこと

ほぼ一年ぶりの久しぶりの投稿となってしまった。まるで夏にしか活動しない昆虫のようだ。

 

ホリエモンが処理水放出の反対者へ怒り「お前ら一回、中学校からやり直せ」 - 社会 : 日刊スポーツ

僕はどうしてALPS処理水海洋放出を「完全に安全」と言うのだろう|kikumaco


「処理水」とよばれるものが海洋に放出されたようだが、賛否両論に揺れている。個人的には東電や政府から十分にきちんと説明されてきたとは言い難く、大きく疑問の残る判断だったと思う。

このままひたすら貯めていくのも無理があるのも事実だが、濾過して薄めて海洋放出するというのも今一つ信用できない。放出したがっているのはあの東電と日本政府であり、どちらも「信頼性」という観点からは果てしなく黒に近い「札付き」な組織だからである。

改めてここで取り上げるまでもないが、どちらも今までさまざまな場面で詭弁、隠蔽、捏造を繰り返してきた組織である。そもそもどうしてそんな組織が実施することを手放しで信用できるのか全く意味が分からない。もう受けた仕打ちの「記憶がない」のであろうか?もしくはいくら詐欺師に騙されても献身するカモなのだろうか?

IAEAの検査を経ているからといって、それをやはり鵜呑みするのは危険だと思う。どこまで検査したのか。東電の提出した書類上の査察だけした、とも考えられなくもない。国際的に「権威」ある組織だからと言って検査プロセスの検証なしにその報告を受け入れてしまうのは権威主義の弱い日本社会ではならではだろう。

こうしたことを踏まえると、やはり今まで大きく被害を受け、今回も実害を受ける福島県の漁業関係者の認める検査機関に検査をしてもらうのがいいだろう。それをせずに話を進めるのはどう考えても無理がある。現首相は福島県に行かず、現地漁業関係者に説明もせずに海洋放出を決めた。これは不誠実極まりない。会社の取引先に自社企画を理解していただくのに、責任者が顔も出さずに話を進めることはあるだろうか?訪問できないのであればリモートでもやるべきだった。

この雑な対応の先におそらくあるのは、魚介輸出の経済的損失、「想定外」の核種検出による海洋汚染の可能性、「うそつき」のレッテルのさらなる重ね張り、信頼低下による更なる国力低下であろう。

中国の輸入禁止措置自体は長くは存続しないと予想している(楽観的過ぎるかもしれない)が、今回の放出を口実にさまざまな交渉材料に使われる危険性は含んでいる。影響下にある周辺諸国は中国の言うことに逆らえなくなるので、日本との取引に形を変えて圧力をかけてくるのではないだろうか。または尖閣諸島周辺に何らかの汚染物質の投棄を実施する可能性も捨てきれない。「日本と同様、検証されて安全なものだ」と言葉を添えて。いずれにせよ、今回の海洋放出は彼らに交渉カードを与えてしまった失策といえるだろう。

「貧すれば鈍する」と昔の人はよく言ったもので、今の日本はまさにこの状況に置かれていると思う。次々打つ手が稚拙でかつ短絡的、人の話は「難癖」と言って聞かず、実害が出てくることがわかっている事象であっても世論を煽り、無理やりに進めようとする。その結果、将来大きな損失出たとしても責任を取るものは有耶無耶になる。結果的に被害を受けるのは東北に住む方々となってしまうのである。度し難い。