異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

朝早くから働いても早く帰れることはない

  この朝方勤務、小賢しくやり方がばっちい。一見すると聞こえはいいが、実情と照らし合わせると、朝早くから夜遅くまで勤務させたい思惑が見えてくる。

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 こうした朝方勤務を経験したことがある人はどれだけいるだろうか。筆者はこれに類似した朝方勤務を行った経験があるが、午後五時台に帰れたことはほとんど皆無だ。帰る意志が弱いと言えばそれまでだが、どれだけの日本人が人目を気にせずに、周りの「空気」を読んでいながらそれでもなおかつ帰れる勇者はどれだけいるだろうか。

 

 筆者の経験からすると、朝方勤務をしていない人たちにとって、朝方だろうがなんだろうが関係ないのが実情だ。その人たちにとって気に触るのは、自分たちが忙しい時に先に帰る人間が存在することである。そもそも誰が「朝方勤務」しているかなど把握している人のほうが珍しく、人から言われてはじめて気づく人のほうが多かった。そうした雰囲気の中で朝早く来たからといって「早帰り」することはほぼ罪に近い。どんなに「早帰り」の権利を主張したところで、周囲から正当に認められなければ意味がない制度なのだ。

 上司や周囲に認めさせるよう周知するというのは一つの手段であるかもしれないが、これは現実的にはなかなか機能しない。なぜなら長時間「サービス」で働いてもらったほうが基本的に企業活動にとって都合がいいからである。

 

 上司より「朝早く」出社し「夜遅くまで働く」ことが暗黙の評価基準である/だった組織は多いのではないか。今ではこのような悪しき風潮は少しづつ変わりつつあるが、記事にあるような「国民運動」を推進すれば、せっかくの変わりつつあった悪しき風潮をまた揺り戻している愚行であると断言したい。

 これは長時間労働を是正したいと表面では繕いながら、その実、長時間労働を促進しているというまるで正反対の流れを創りだそうとしているように思える。今の政権はこのように一見「プラス」を標榜しているようで、実は「マイナス」に持っていく政策が特に多く、問題点がありすぎる。

 

 今の日本で長時間労働を本気で是正するには、まず労働時間規制を強化するのがスジだと常々思っている。その他にも男性の家事・育児参加を積極奨励する方針を打ち出すこともあろうが、まずは長時間労働を法律の面から厳しく罰していく方針を示さないことにはブラック企業は益々のさばることだろう。労働者に長時間労働させることは経営戦略的にも「損」であることを経営者に周知させていくことが、まず最初の優先事項なのではないか。

 

 労働者の権利意識が浸透した欧米で行うなら効果があるかもしれないが、日本で記事にあるような小手先なやり方ではまずもって長時間労働は減らないし、逆に増長させる結果となりかねない。

 ホワイトカラーエグゼンプション制度もそうであるが、こうしたブラック寄りの施策ばかりが登場する背景には、ブラック企業を応援したい思惑がどこかにあるからではないかと勘ぐられても仕方がないことだ。これらはもう成長戦略などと言えたシロモノでなく、徹底的に働かせ使い倒す「衰退戦略」と改名するにふさわしい方針だと思う。