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異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

嫌な予感がするロンドン地下鉄の24時間運行

 ロンドンの地下鉄は本日から主要線は24時間運行となる予定であった。通称Night Tubeと呼ばれ、都市部周辺に住む人にとっては利便性が増すとされていた。

 だがそれを受けて地下鉄従業員のストライキが頻発し、最終的に運行開始日を延期することになった。いつから運行開始なのかは現時点では不明で、もうすぐ開始とも来年の3月開始とも言われ、予定は定まっていない。鳴り物入りでさんざん通勤者にとっては迷惑であったストライキを経験しながらも、結局のところ「延期」とはロンドン市長にとっては面目丸つぶれで、さぞかし悔しい思いをしていることだろう。

 地下鉄労働者側の言い分は、要は夜間も働くわけであるからその分の割増賃金を上乗せしてほしいというわけである。地下鉄従業員の平均給与は年間5万ポンドに届くかとも言われ、さらなる賃上げには世間の批判の声も多い。平均給与を算出することで批判を煽ることにあまり意味があるとは思えないが、地下鉄利用者からの声としてはストライキでひどい目にあったのと、今後の運賃値上げも懸念されていることから、労働者側の言い分である賃上げには好印象を持たれていないようだ。

 ただ、こう言っては何だが、感心するのは労働組合側の何度にも渡るストライキの実行能力である。組合員を意思をまとめて、とある日時にストライキを実行に移す能力は長けていると言わざるを得ない。

 

 深夜運行することによってどれだけ経済効果がもたらせられるのかどうかは不明だが、筆者はこの動きをあまり歓迎していない。おそらく深夜でも帰れるようになることから、深酒して我を忘れる輩も増えるのではないだろうか。現在でも夜の地下鉄には大声を張り上げたり、猿のように電車の手すりにぶら下がって戯れる酔っぱらいは多い。これが夜中ずっと繰り返されるのかと思うと、あまり歓迎できる気持ちにはなれない。

 もうひとつ言うと、いちおう欧米の先進国とされる英国がこのような「前例」を作ると、その例を取り入れたがる国があるということである。米国ではニューヨークとシカゴが行っているらしいが、それに加えてロンドンもやり始めると、どこかの国も導入検討を始めるのではないかと危惧をしている。

 

 そのどこかの国は、ただでさえ過重労働を強いるようなシステムが強固に出来上がっている。「終電を逃すといけないから」というのは、退社できる一つの理由として成り立っているところも多いのではないか。24時間運行が可能になれば、その最後の拠り所というべき、「終電」という言い訳も通用しなくなってしまう。ブラック企業経営者にとっては、とてもうれしい制度であると容易に想像できるが、その被雇用者にとってはたまったものではない。

 英国の労働者は定時で帰ることは気兼ねしない普通のことなので、24時間運行にシフトしても違和感は少ないのかも知れない。もしかしたら予想通りに経済効果も上がるのかも知れない。しかしこれを「経済効果」の側面のみから判断し、近い将来、どこかの国が短絡的にマネをするのではないかと筆者は危惧をするのである。