異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

現代版「一揆」の後味は、はたしていいものなのか

 今回は妄想的将来予測ということで。

 ブラック企業に対する抗議、抵抗としてはなかなかおもしろいと思うし、効果も上々だったようだ。このやり方は今後も流行るんじゃないだろうか。ちょっとした現代版「一揆」のようだ。

 そうはいっても一致団結して一斉にやめるというのは、利害関係の絡む企業内だけになかなか難しく、ここまできれいにできる例はそう見当たらないとも思う。普通は裏切り者(退職するといって辞めない人)は出てくるものだし、どっちつかずもいるだろうし、事前にバレることのほうがほとんどだろう。

 

 それでも仮にこの一斉退職がブラック企業に抗議するひとつの社会的風潮となったとき、次にくるものは何だろうか。

 それは「ストライキをやらせない」ことや「退職をさせない」動きを強めることだと思っている。ブラック化を実質上応援する政策を行っている、現代の流れからも辻褄が合う。

 退職する権利は労働者にとって、最も強く認められている権利だと聞いたことがあるが、ブラック側はここを「規制緩和だ」と言って切り崩しにかかってくると思う。「うちの業務は社会の生命線」だとかいろいろ理由をつけて。病院や発電所などと同等の「社会重要度」に無理くり位置づけて。「退職」をできる限り行えなくするように仕向けてくるだろう。

 仕事を辞めたいにも関わらず辞めさせてくれないのは「強制労働」に該当する。仕事をやめさせない法案などがまかり通れば、ここにきて日本は真の意味での「奴隷制」が完成を見ることになる。

 

 こんな横暴が通るはずはないと思う方も多いかもしれないが、一斉退職の抗議風潮が今後高まれば、少なくとも「退職するべからず」と声を上げる議員や会社役員はほぼ確実に出てくると思う。それが奴隷制を意味することもわからずに(もしくは知っていながら)発言する愚者は、今の日本に少なからず存在し、それらが指導的役割を担っているからだ。

 そして結果的に自分のクビを締めることになることも知らずに、「社会の一員として、しっかり仕事しろ」とか偉そうに宣って、思考停止したまま賛同する有象無象も数多く登場してくるだろう。根拠なく言ってるのではなく、似たような光景は以前にも見たことがあるから述べている。

 一斉退職という現代の「一揆」を試みるなと言っているのではない。なんだろう、きっとその後のテンプレート的な展開がおぼろげに見えてくる気持ち悪さに辟易しているのである。