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異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

オランダの都市で行われるベーシックインカムはうまくいくのか

jobs thinking

 ベーシックインカム制度について以前よく議論を見かけたが、最近その話題はとんと聞かなくなった。と思っていたら、オランダのとある都市で試みを始めるそうである。

 その決断に至った経緯と、実行してからの経過観察はたいへん気になるところである。またぜひともその詳細データを世の中にオープンソース化してほしい。正直いってベーシックインカム制度については、賛否両論が多く、良いとも悪いとも言い切れない面がどうしても存在する。

 生活保護とは異なり、全員が一定額給付されるので、わけのわからない差別や給付を渋る「水際作戦」などを行う意義はそもそも薄れていくだろう。貧困をなくす制度としてはかなりの効果を見込める反面、財源確保と労働意欲の減少という問題はいまだどうすればいいのか、その結果はまだよくわかっていない点は多い。こうした点がクリアになっていけば、実際のところどうなのか、どう問題点に対応していけばいいのかという疑問が一つずつ見えてくることが期待できる。

 

 この記事のリンク先にあるが、過去にベーシックインカム制度を試みたケースがあったのに驚いた。

カナダのManitobaという州のある都市で1974から1979年に行われたらしい。惜しむらくは、データ収集そのものは行われたらしいが、その結果について分析された正式なレポートは世に出されることはなかったという。

 ただ、この制度が行われていた5年の間では入院する患者の率が有意に下がっていることが認められたそうである。これが事前に病気を治すために、医療費をベーシックインカムから充てたのか、ただ病院に通わなくなったのか、この記事からはよく読み取れない。せっかく5年間も試みたのに、政権が変わってしまったことにより打ち切られたのと、データがまともな形で発表されなかったのはなんとも残念である。

 

 今回のオランダの都市でうまくまわっていくのであれば、適用規模を拡大した場合など、どうなっていくのかなども気になるところである。国家単位規模で行ったケースはまだ無いようであるので、拡大できるのであれば州単位でも試みてほしいところである。そして今回の試みで、期間はどれほどになるかはわからないが、少なくともその結果の長所・短所をまとめたレポートを出して欲しいところだ。

 

 筆者はベーシックインカム制度については、まだ疑問点は多くあれど、概ね前向きに見ている。うまく運用できればという前提がつくが、国民の最低限の幸福と健康をまず守るという点においては、かなりの確度で実現できるのではないだろうか。こうした試みを行える環境があることを本当に羨ましく思う。

 日本でこうした壮大な「実験」が行われたという話は残念ながら筆者は耳にしたことがない。経済特区などを設置するという案はよく出てくるが、どちらかというと企業を優遇する案であり、オランダの試みと相対的な視点に立つと、国民を将来どうしていくかという視点がどうしても希薄な気がしてならない。

 社会は人のためにあるのであり、人が社会のためにあるのではない。ましてや、企業や組織のために人は存在していると言い切ることは危険な考えであると思う。そこの部分がどうも履き違えられている気がしてならないのである。