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異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

パナマペーパーから見えてくる闇

 パナマペーパーが世界を騒がしている。日本でもここのところそれなりに話題になっているようだ。

パナマ文書に関するトピックス:朝日新聞デジタル

パナマ文書とは?日本人&日本企業リストの影響と報道しない理由 | 歩叶コラム

2016年04月05日(火)「タックスヘイブンの実態を暴く、パナマペーパーの衝撃」(探究モード) — 荻上チキ・Session-22 — Overcast

富裕層の資産隠しが問題なのは古今東西変わらないことだが、ここまで大きく流出したのは珍しい。違法性はないかもしれないが、これは大きな問題である。何が問題なのかわからない方は上記記事やポッドキャストをぜひ視聴してほしい。

 租税回避してきた額が総額でどれだけになるか、はっきりしたことはわからないし、これからもどこまで出てくるのか見えない。日本に関連するところでは、上記コラムによれば、ケイマン諸島だけで55兆円と記載されているが、ほかの拠点も合わせればこれよりも大きくなるということだろう。つまり少なくとも55兆円分は本来税金として収められていたはずだったのが、巨大企業や富者のフトコロに収まっていたということだ。

 ここでもう一つ記事を紹介したい。

貧富! 日本の貯蓄格差は「常軌を逸している」 データは踊る【7】:PRESIDENT Online - プレジデント

日本人の貯蓄格差をレポートした記事だが、ここで注意したいのは、これはあくまで国が「把握している範囲でのデータ」を元にして格差を求めているということだ。租税回避(少なくとも)55兆円分の背景にあった資産はここには含められていないはずである。つまり日本での貯蓄格差はさらに広がりを見せている可能性は高く、常軌を逸しているどころか、狂気の沙汰の格差になっていることは否定できないのではないか。日本という国はそういう状態に陥ってしまっていると考えていいだろう。

 

 日本の外に住んでいる筆者から見ると、日本は狂気の沙汰状態であるにもかかわらず、ほとんどの人は静観しているように見える。リストに日本の有名企業や富裕層の具体名が上がっているにもかかわらず、その真意を求めるような動きは、少なくとも「日本死ね」保育園問題を取り上げた時のような動きは見せていない。55兆円の納税がしっかりなされていれば、このような問題はおそらく生じていなかった、もしくは解決できるにもかかわらずだ。

 保育園問題を掲載した人の年収が約一千万だったとか、本当にどうでもよい、互いの足を引っ張るような小さな問題に対しては鬼の首を取ったかのように騒ぐのに、こうした巨大な問題に対してはどうして正視しないのだろうか。海の向こうの遠い国で起きた、身近でない問題として認識しているのかもしれないが、租税されなかったことによって「現在苦しんでいる自分がいる」という想像力は少しでも働かないのだろうか。過度な自業自得意識というか、「自己責任論」にそこまで毒されているという証左なのか。筆者にはなぜこの問題がもっと騒ぎにならないのかよくわからない。

 

 最近また消費税を増税する論議がある。それはそれでいずれは必要なのかもしれないが、それ以前に、まずは資産隠しを行っている巨大企業や富裕層に税金を納めさせる仕組みを考えることが先ではないだろうか。資産課税する仕組みは、おそらくこれまで行われてきた課税の仕組みの中で最も難しい部類に入ることは想像に難しくないが、このままでは「貧者からの納税で富者が潤う」だけでなく、「貧者だけが高税率で困窮し、富者のみが納税せずに一方的な社会的利益を享受する」という物語が待ち受ける世の中になる。消費増税を口にする政治家、財界人、その他著名人はまずこのリストに掲載されていないかをチェックすることからはじめよう。

 

 このパナマペーパーを流出させた人物は、どのような目的があって行ったのかまだよくわかっていない。そもそもこのような情報に接することができる人物は世界の「1%」に近い人物であることはほぼ間違いないだろう。自分たちの首を絞めることをわざわざ行うのは怨恨か、あるいは別の意図があってのことだ。筆者の勘では、この先「荒れる」予感がしてならない。これをきっかけとして今後、どのような「闇」が明るみに出てくるかを見守っていきたい。