異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

労働法は誰のためのものか

しばらく旅行に出ていたので、更新が滞ってしまった。ここのところニュースにもあまり目を通すことができなかったので、話題について行けてない。ちょっと前にブックマークしておいたことに触れておきたい。

社説:長時間労働 働く人を使いつぶすな - 毎日新聞

上記の社説、趣旨はよく理解できるがどうも違和感がつきまとう。というのも、できる得るかぎり安く限界まで「働く人を使い倒したい」という思惑がある企業に「使いつぶすな」と言ったところで馬の耳に念仏なのではないだろうか。労働者を効果的に使い倒せるよう、「成長戦略」の名目のもと、政策を進める政治にどんなに正論を説いたところで、考えが変わる確率は限りなく低いのではないだろうか。

現状の悲惨な労働環境は多くのところで認識されている。「現状を洗い出す」作業は継続するべきだとは思うが、そろそろ次のフェーズに移行しても良い頃合いでもあると思う。問題点をまとめ上げ、具体的な施策に落とし込んでいくフェーズである。

労働時間の規制緩和が叫ばれて久しいが、筆者は真逆の提案をすべきだと思っている。つまり主張の大枠は労働時間規制強化であり、時間外労働における賃金の大幅割増が適切ではないかと思う。

そして、今ある問題を取り上げ、労働法に関する教育を義務教育段階で行うことである。そもそも日本国民の三大義務と言われる納税・勤労・教育について、体系的に教育が行われているのであろうか。少なくとも筆者の時代には三大義務とは何かについて説明されたが、それらが実生活にどう関わりを持つか学んだとは記憶していない。いや、正確には納税は一般的な事柄について学んだ記憶はあるが、労働についてはどのような制限や事件、問題があるのかなどは教師によってその捉え方はさまざまであり、教え方に軽重があったように思う。

筆者もそうであるが、世の中に出てからも労働法について知らない人は多いと思われる。ここの教育が行き届いていれば、ブラック企業に搾取されることも、少なくとも現在よりは防げたに違いない。

成長戦略として企業競争力向上に焦点が多く当てられているが、その前に人が社会で生活するためのルール再確認が前提に来るべきではないだろうか。ルール緩和やルール無用の競争力向上ばかりを行う政策や企業に愚痴を言っても効果は見込めない。具体的な提言まで落とし込める材料をマスコミは提供して欲しいし、労働法本来の姿に沿った働き方を働く側もして自己防衛に務めるべきであろう。その上で、労働法の見直しは成長戦略の視点ではなく、労働者の視点に立った方向で改善していくべき問題なのだ。