異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

ヤジ事件の背後には暗い意味での「女性活用」がある

論点を撹乱させる意見が今後たくさん出ると予想したが、出るわ、出るわ。

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リンクも貼るのも馬鹿らしいので、上記はタイトル引用だけにさせていただく。どうしても読みたい方は各自検索でどうぞ。

誤解のないように書いておくと、筆者は塩村都議を別に擁護する気はサラサラない。というより、もし彼女が次の都議会選挙で立候補してかつその頃、筆者が東京都に住んでいたとしたら、おそらく票を入れないだろう。彼女からは筆者と相容れないものを感じ取れるし、考え方の方向性も異なっている。

ただ、彼女の受けたヤジは根本的に問題の質が異なっている。あのヤジは彼女個人に向けられていたと同時に、「『ある種』の人間はモノとして扱かっても構わない」という、とても下卑た思惑が根底に流れていると考えられる。『ある種』とはこの文脈の場合は「女性」である。女性以外にも異なる文脈で使われる差別対象はいくらでもいる。人種、障害者、非嫡出児、非正規雇用者、ホームレス、部落出身者、子ども、精神病患者、etc...。例を上げればキリがないが、この種の下劣な差別意識、もしくは人をモノとして見下す考え方の応用・転用は、いくらでも可能なのである。そして世界のどこでもこれは起こり得る。

筆者が米国に住んでいた時、あるラジオ番組の人気司会者が突然クビにされた。理由は黒人バスケットボール選手に対し、差別的な表現を用いたからである。多民族国家である米国ではこうした差別表現に対する社会的な風当たりはとても厳しい。そして厳しくしないと、すぐに蒸し返してくる問題であることがここから垣間見える。人心の奥に巣食う差別感情には、継続した厳しい社会的な監視とメンテナンスが必要ということなのだと思う。

今回の日本で起きたこの事件に対しては、そのような厳しさは欠片もない。出来事としては、塩村氏個人のみに謝罪して幕引きを図ろうとする意図ぐらいなものだろう。首相もみんなの党代表に対して謝罪をしたようであるが、本当にそれだけで済む話なのだろうか?そして塩村氏の個人問題をあげつらうことで、問題の本質から市民の目をそらさせようとしているのではないか?

 

このような展開から、あることが見えてきたように思う。それは差別的な事件があったという事実を有耶無耶にすると同時に、「人間はモノとして扱かっても構わない」と容認する空気を醸成させることである。

日本の首都、しかも東京都議会で起きた事件である。オリンピック開催予定都市での出来事である。都議会は国政と直接関係がないとはいえ、首相が自ら何らかの言葉を国民、あるいは世界の人に向けてあってもいいのではないかと思う。ましてや、女性の積極活用を成長戦略の一つに掲げている首相である。こうした由々しき事件は本来あってはならないはずだが、事実として出てきたのはみんなの党代表へ向けた謝罪しか筆者は知らない。問題は他にも潜在する現実を直視し、その是正に向けて首相が自ら動く気配は皆無だ。

この事実はおそらく次のことを物語っている。女性の積極活用は成長戦略の柱になることはウソではない。しかし、それは女性を人間としての扱いをグレーゾーンにしたままの「積極活用」なのではないだろうか。それは女性をブラックな立場のままで「積極活用していく」ことにつながっていく。

過酷な労働環境の中で女性を積極登用し、その上、人としての尊厳を踏みにじられても問題を有耶無耶にしていく方向での「活用」。過酷な労働環境の中、男性労働者のストレスはけ口としての女性「活用」。女性地位向上の恩恵を受けるのはほんの一握りで、そのグラス・シーリングで遮られた目標に向かって大多数の女性を、がむしゃらに走らせる意味での「活用」。その影で、下位のままでいるのは「自己責任」と暗示をかけられ、どこまでも疲労と自己嫌悪で陥る居場所のない日々。「モノ」として扱われることに擦れ果て、自分が何者であるのかさえ分からなくなる惨めな末路・・・。

ここで書いたことは大げさなのかもしれない。そう切に願いたい。だが、表出する事実として示される状況はどちらかというと、決して明るい未来を示してはいないように筆者は思える。

今回の事件をどうまとめ、対処していくかで、今後女性やほかのマイノリティと呼ばれる人たちの扱いを見る試金石になると思う。ワールドカップだけでなく、こちらも注視していきたい。

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