異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

Logical loser, illogical winner

 一足先に在外選挙を済ませた身であるが、日本では明日、参院選挙が行われる予定だ。おそらく結果は筆者の希望する方向に向かわないことはほぼ確実だろう。が、たとえそうであっても徒然なるままに書いておこう。

 

 今回の選挙において自民党は改憲については言及を避けているが、過去の振る舞いを見れば、選挙後に改憲を念頭においてくることは間違いない。そうであるならば、きちんと選挙の争点にすべきであると思うが、経済政策のほうに重きをおくという、ある意味「目くらまし」を争点としている。こうしたやり方で憲法を変えていく方向に持っていくというのは、筆者としてはとうてい賛成できるものではないが、これが今の自民党という党の本質なのだろう。

 一度、自民党の改憲草案というものに目を通してみることをお勧めする。その上で、どこが問題なのかをネットで検索してみることも忘れてはいけない。問題点に言及したサイトは山ほど登場するのでここではあえて触れないが、読むに耐えない、筋が悪い草案であるということを再確認できることは確実だ。たとえ筆者のような法律の素人が読んでも現在ある自民党の知性レベルが見えてくるので、その意味においては参考になるだろう。

 

僕は自由民主党に入れる - shi3zの長文日記

 このブログは技術系のすばらしい文章を掲載してくれるので、いつも勉強させていただいている。はっきりいって、普段の掲載文章は筆者にとって「雲の上の人」レベルなので畏敬の念を抱き続けるしかなかったが、今回の文章はそうではなかった。「目の前の現実」に終始囚われている内容であり、過去と未来を俯瞰し、経済的な視点以外からもきちんと見つめているとは言い難い。政治とは経済問題だけでなく、教育、防衛、環境、エネルギーなど総合的に見ていかなくてはならないはずだが、そういった複眼的な視点が全く欠けた残念な内容だった。もっとも教育でいえば、「プログラミング教育が含まれている」ということをあげていたが、プログラミングはあくまで目的を実現する「手段」であって、「目的」を生成する能力を養うには「プログラミング教育」では全く足りないのだ。そして日本で最も足りていないのはこの「目的」を考え抜く能力だと筆者は考えている。

 他人がどの党を支持するかは筆者にとってどうでもいいことだ。だがこのブログに書かれているような近視眼的視点から自民党を支持しているのであれば、短絡すぎはしないだろうか。その短絡思考の延長線として、ひいては以下のような偏向思考を支持していくことにつながることをぜひ再認識していただきたい。

自民党HP『「子供たちを戦場に送るな」は中立じゃない』 批判→修正→調査は続行

 

荻上式BLOG

 この人にも残念な気持ちを禁じ得ない。TBSのポッドキャストサービスは終了してしまったが(これももう一つの「残念」だが)、それまで筆者はこの方の放送をよくポッドキャストで聞いていた。この方のリベラルに物事を見る視点は、筆者も共感できるところも多く、異国から聞くのを毎回楽しみにしていたが、この人自身の描く家族像というものはこの程度だったかと言わざるを得ない。

 思うにリベラルと言われる人たちは、自分たちの紡ぐ言葉に過信をしすぎではないか。確かに言葉はそれを書く/話す人の身体から離れれば、別人格を持ち、本人の私生活とは関係のない意味合いを持つこともある。また言葉とはなるべくそうあるべきだとも思う。ただ、現実においてはそう考えない人も数多くいる。というか、そう考えない人の数の方が多い。フィクション小説の内容であっても、書いた著者の現実生活とどこか相似性はないか、なんらかの共通点を求めていく性はどうしてもある。共通点どころか、著者をありもしない高みへ、いうなれば書いた本人も想像していない聖人へと祭り上げていくことも多い。

 おそらくこの方は自分が考えている「自分像」と、世間が想う「発信者像」に乖離が生じていることに気づけていなかった。今回の件で「リベラルな思考を持つ人」に対しての世間的評価を下げることは避けがたいと筆者は考えている。

 

 あくまで想像だが、リベラルとは逆の方向にある日本会議へ属している方々はこのような「脇の甘さ」はあまりないのではないか。たとえその基本概念や論理はめちゃくちゃでも、末端の人々の発する日々の小さな言葉と行動が一致し、そしてその積み重ねが彼らの強みなのではないかと思う。その実践している「安定性」がその支持基盤につながっているのではないだろうか。

 この文脈においてリベラルと言われている人たちはいまだ勝てるはずもない。その「驕り」が選挙での「負け」を招いており、それに気づけない間はこれからも勝てる見込みはない。