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異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

United we stand, Divided we fall

living abroad politics

 「残留」の意思表示をしていた多くの人はあまく見ていた。まさか離脱などしないだろう、最後には良識が働くだろうと。でも結果はそうならなかった。英国の出した結論はEUからの離脱であった。

 

 少なくとも筆者の周囲では、「残留」の意思を示す人が圧倒的に多かった。開票結果をリアルタイムで見つめていたが、結果が発表された時、皆が真剣に唖然としていた顔が忘れられない。スコットランドと都市部を除いた、多くの地域では「離脱」が上回った。

 地方と都市部でこれほどまでに温度差があったことに驚く。地方は都市部のような恩恵がまわらず、移民による「被害」としての面が根深く認識されていたということだ。これは経済云々の問題だけでなく、移民に対する嫌悪感の面も含まれていることは否めない。自分たちの生活習慣や伝統が移民たちによって破壊されていると認識している人は想像していたよりはるかに多かったのだ。

 離脱を支持した人たちは移民を目に見える障壁として認識し、それをターゲットとした。そして異国から人の流入を許容する残留組の言説には耳を傾けず、特権的に恩恵を被っているエスタブリッシュメントとして攻撃した。残留組も丁寧な説明をしていたかといえば、そうではなかった。経済損失面だけを強調して、移民たちとどう文化的にうまく融合していくかという説明はほとんど聞いたことはない。それもそのはずで、残留の人たちは「自分たちは移民との関係はうまくいっている」し、その説明をする必要性すら感じていないからだ。そもそも移民たちと意思疎通ができる人たちであり、都市部においては、移民たちも残留支持の人たちと意思疎通が可能なだけの知識と教養を持ち合わせている人は多いからである。

 

 これは筆者の想像でもあり、よく語られていることでもあるが、都市部と地方、言い換えれば富裕層と貧困層との言葉が通じ合っていない。長年固定化された格差が意思疎通の断絶を生み出している。ここまで互いの認識の差が大きく出た投票結果は、米国のトランプ現象でも見られるし、世界的なトレンドとなり他の地域でも発生していくことだろう。

 ちなみに筆者が日頃から考えていることと、今回の「離脱」結果を踏まえた文脈から思考を進めていくと、「トランプ大統領」は本当に誕生するのではないかと最近真剣に思いはじめている。ヒラリー氏の言葉が理解できない、伝わらない人のほうが今の米国では多いのではないだろうか。そしてその受け皿は、怒りと憎しみをより短絡的に代弁してくれるトランプ氏のほうが、感情的に溜飲を下げることができる。「論理や難しいことはいらない。やり場のない負の感情のはけ口を用意してくれればいい」というロジックが彼らの心の底でくすぶり続けていることが見受けられる。

 その結果、この先「分断」というキーワードが重要になってくるだろう。

スコットランド、2回目の住民投票手続き開始へ : 国際 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)

スペインのカタルーニャ自治州首相「独立可能、英EU離脱が証明」 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

ロンドンという一都市についても「独立」機運が高まっていると聞く。いずれもそう簡単にいくとは思えないが、比較的富裕な地域や人々と、そうでないところとで「分断」は深刻化していく。こうした分断が何を生んでいくか、過去のエントリーでも触れたことがある

 

 日本でも今度の選挙では、改憲勢力が強くなっていると聞く。その底流に何があるのかは想像するしかないが、どこかに「敵」を作り出しそれを排外したい想いがあるとすれば、もしかしたら今の世界の潮流に沿った動きなのかもしれない。それを望むならそれもまた仕方のないことかもしれない。だが、その先にあることを少しでも想像してもらいたい。

 「自分たちの国を取り戻す」という想いが純化したとき、それは異国や隣国でも同様に起きているということ。その想いが互いに隣接したとき、それが決して相容れることはないということ。そしてその「敵」の先には「戦い」しかないということを。

 世界が分断していく前に歩みを止めて問いたい。そもそも本当に「敵」などいるのだろうかと。その問いすら理解できなくなっていることはないだろう、と信じながら。

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※ 漫画『VINLAND SAGA - ヴィンランド・サガ -』の一節より