異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

慰安婦問題の合意は新たなる問題の種を蒔く

 年末も近いが、ちょっとした話題が出てきた。はたしてこの合意の後は、どのように進んで行くのだろうか?

あくまで両政府間の政治的な合意であるので、両国の市民レベルではまだ運動は続いていくだろうし、本当の問題解決に至る道はそう単純ではないと思う。表から裏からさまざまな圧力と手練手管を用いて、とにかく合意までこぎ着けたのが実情ではないだろうか。被害者と加害者の問題は宙に浮いてしまった形での合意に見える。要は両国政権の「実績づくり」終始した面は否定しきれない。

 

 日本での政権運営は今、先の戦争での「敗北を受け入れられない人たち」で成り立っていると筆者は想像している。随所にその状況は見られるし、おそらく最終的な目標は先の戦争での敗けを帳消しにし、かつての「八紘一宇」などのような偏狭理念をゴリ押ししていくことにあるとみている。

 この前提からすると、今回の合意は色濃い政権支持基盤である人々からは受け入れられないはずだ。首相のFacebookを見ても今回の決定は支持できないとの声も多いようだが、これぐらいの反応は当然、シナリオの一部として見ている。

 今後は「最終的な解決とその不可逆性」を布石に、性奴隷を強いてきた歴史解釈を変えていく方向に向かうだろう。そしておそらく慰安婦の少女像の撤去を求めていくのはその一連の動きの一つだ。そうした一連の過程の中で支持を取り戻していくことは、すでに織り込み済みなはずである。

 

 戦争と奴隷制を前提とした社会と経済体制への移行に、過去、性奴隷が存在した事実は都合が悪い。戦争への嫌悪を認識されることは、今後の経済活動への障壁となりかねない。過去の悲惨と屈辱から目を背けさせることこそが、自画自賛と暴虐を存分に堪能できる未来へと繋がっていくのだ・・・

・・・筆者の勝手な見立ては大げさすぎるだろうか。そうであることを願いたい。