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異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

厳しさの再分配

 一方では「終身雇用が崩壊したのだから、会社が面倒を見てくれると思うな」と言い、その一方で副業をするなと言う。ではどうやって経営者たちがいう「厳しい時代」を従業員は乗り切って行けるというのだろうか。

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◆ 副業は禁止ではないが・・・

 就業規則の中で副業を禁止する企業は多い。仕事や社会、世の中の厳しさを説くのであれば、これは矛盾した規則であると思うが、従業員も納得の上で、企業が働く人たちの生活をきちんと保証してくれているのであれば、それもアリかなと思える。

 だが、引用した記事にある会社は違う。副業禁止を明記しているわけでもないのに、副業をすると「社長に叱責され、退職勧奨される」のである。経営者自らの手で作ったルールを自ら無視しているようなもので、これをブラック企業と言わずになんと言うのであろうか。こうした企業に勤めてしまったのは何とも運が悪かったとしか言いようがないが、傷が深くならないうちに次の道を探すほうがいいだろう。

 幸いここで紹介されている弁護士は少しマシな神経の持ち主であるようだが、弁護士が皆まともであるとは限らない。いや、現実はまともでない弁護士の方が世の中には多いのかもしれない。ブラック企業に手を貸して、犯罪に加担する弁護士も後を立たないとも聞く。人を喰い物として扱う仕組みが、ブラック企業をはじめとする周辺関係者(社労士や弁護士など)を巻き込んで「システム化」されている以上、従業員一人一人が強固な意思を持ってそれを取り壊して行かねばならないだろう。まぁ、こうして言うのは容易いが、現実に行うのはひどく骨の折れる作業である。

◆ ブラック経営者の思考形態

 「社員だって持ちうるすべての情熱を会社の成長に傾けてもらわないと困る!」などと宣う経営者の性質はだいたい想像できる。おそらく「時代は変化した。終身雇用などあると思うな」とも同時に叫んでいるのはないか。「人の成長は仕事を通してのみ実現可能だ」というようなこともきっと暑苦しく語っていることだろう。年功序列はもう古いといいながらも、自分の立場を絶対化するための、年功序列とは異なる「序列」の導入もまず例外なく行っていると思っていい。彼/彼女らの口が語る「会社」という文脈は「俺/私の利益向上」という言葉に置き換えてほぼ間違いない。

 平たく言えば、彼らのほとんど全ての思考/行動形態において「搾取」を主眼においている。そのためなら自らが定めた(もしくは法律が定めた)ルールなど、多少踏み外してもよしとする「柔軟な考え」を都合よく持ち合わせているのである。

◆ 彼らは自分への利益に敏感

 こうした経営者のいる会社でどんなに短時間労働や、ワークライフバランスなどといった働き方を説いてもはっきり言って無駄である。自分の利益とその向上にそぐわない働き方を認めるはずがないからである。たとえ短時間労働で生産性を向上させたとしても、彼らの頭の中ではそれを「長時間労働に適用させたら、さらに利益を上げられる」という方針に変換される。育児/介護休暇は穀潰しの従業員が行うことだという常識が固着している。このようなブラック経営者に何を説いても時間の無駄なのである。

 彼らの経営方針を変えることができる最も効率の良いやり方として、懲罰的な罰則があげられると思う。彼らの利益を大幅に減じるような懲罰には、彼らはとても敏感だ。例をあげれば、長時間労働を従業員に無償で行わせていた経営者には、多額の罰金刑を課すような法律を成立させれば、従業員に長時間労働をさせることは割に合わないと瞬時に彼らは計算するだろう。育児/介護休暇取得率が低い企業へは、法人税率を上げるような施策もあっていいと思う。反対に取得率が高い良心的な企業へは低税率にするのもいいだろう。取得率を改ざんするような企業には、やはり懲罰的な多額罰金を適用してもいい。

◆ 厳しさも配分しよう

 自分への利益が最優先事項として常にある彼らの思考法を逆手に取れば、いろいろなアイディアが出てきそうなものである。もちろん良心的な経営者にも配慮は必要であるが、これだけブラック企業が問題化している中にあって、そのしわ寄せを労働者が負担するのはやはり片手落ちである。現在、経営層に有利な労働規制緩和が進められているが、強い立場にある経営者にも「厳しさ」を配分する施策をぜひ検討してもらいたい。