異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

日本企業は昔から“洗脳”があったとしてもそれを続けていいということではない

しばらく書評や映画評を書こうと思っていたが、予定変更する。少々文句を申し上げておきたい記事が目に止まったからだ。

「日本企業は昔から“洗脳”のようなものがあった」人事コンサルタント城繁幸氏 | 日刊SPA!

この人事コンサルタントは自分の言っていることがわかっているのだろうか?このような人間に「人事コンサルタント」をされた企業は、まっすぐ末路まっしぐらになるに違いない。少なくともブラックな方向に向かうことだけは保証できると思う。「ポエム」をこのような形で肯定的に捉えるということはそういうことなのだ。

この記事からは少なくとも、

  • 大企業もやっているのだから中小企業がやったところで、どうということはない
  • どの会社でも「どこもあんなモンです」で一般化しようとする
  • 「ポエムが広がる」余地があったのであり、それは仕方がないこと

ということをおそらく言いたかったのだろう。(もっとも、マスコミによる印象操作の可能性は捨てきれないが、ここでは言及しない)

「居酒屋甲子園やポエムで帰属意識を高めて前向きに働ける工夫をした」だと?

違う。全く持って認識が間違えている。あの居酒屋甲子園ような場やポエムを重要視する職場は、従業員の洗脳目的に限りなく近い。オウム真理教の「修行」や自己批判の絶叫は、その組織に徹底従属、いや隷属させる意識を植え付ける典型手法とも言える。おそらく組織を辞めて間もない元社員は激しい自己嫌悪と悔恨の情が襲ってきた人も多いのではないだろうか。そこまで取材できる報道機関が今の日本にはないのが悲しい現実でもある。

上記の引用を筆者ならば、「居酒屋甲子園やポエムで隷属意識を高めて前しか見ないで働くようけしかけた」と言ったほうが腑に落ちる。給与や労働時間といった雇用者が煙たがる、泥臭い話は一切登場させず、キレイ事だけで「楽しい」ような場所を作り出すのは「逃げ」でしかない。離職率が高い職場の一時的なカタルシスによる表面的な問題解決でしかないのである。問題の本質を見たくない人たちに本当の問題解決などできるはずもない。

この人事コンサルタント氏はその文脈からすると、「ブラックな職場促進委員会(筆者が勝手に命名した架空の組織)」のような組織に入会していても少しも不自然ではない。日本人は職場改善を求めて長きにわたって、少しずつではあるが、歩みを進めてきたが、城繁幸氏の見識はそれに逆行し、作り上げてきた社会を退行させかねないものだと思う、今日このごろ、そして明日である。