異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

IKEAは「本当のサービスとは何か」をわかる必要はない

筆者はニトリに行ったことがないので比較することはできないのだが、以下のブログ記事にちょっと意見を申し上げたい。

IKEAは「本当のサービスとは何か」をわかっていない :: さようなら、憂鬱な木曜日

米国にいたときも、現在いる英国でもよく世話になっているのがIKEAだ。特にその国に到着した当初は家具や生活雑貨などたくさん用意するものがある。その際にIKEAは重宝する。とにかく安いのでここで暮らしの道具を一通りそろえることができるのだ。

だが、引用したブログ主が指摘しているようにサービスは悪い。店員の対応が悪い、配送物がなかなか届かない、組み立て部品が足りないなど日常茶飯事だ。そうとわかってきたので、自分の車で直接乗り付け、配送業者には頼まず、梱包に問題ないことを確認、を基本的な買い方として心得だしてからは大きな違和感は感じなくなった。

IKEAはDIY (Do It Yourself) を基本路線としているとしているのだと思う。つまり「安く売るからあとは自分でなんとかしてね」というのが企業思想としてあるのではないか。DIY精神を子どもの頃から根付かせる米国では、こうした最小限のサービスでやりくりする形式はとても受け入れ易いと思う。そしてレストランや配送サービスなどは、あくまで付随的なサービスでそれに対しての期待などはじめからないのだ。

翻って日本では手厚いサービスを行うことを店側は求められる。引用したブログ主も日本で商売するからには日本のサービスについてよく研究してから進出しろと言いたいのだと思う。言いたいことはとても理解できる。ただ、あの値段でそれを求めるのはおそらくどこかに無理が生じる。同じ値段でニトリはできているのかも知れないが、もしそうだとすれば組織のどこかに歪みがあるのではないだろうか。

物事は全て丸く収まるという事は少なく、どこかを長くすればどこかが短くなるのが自然なのである。IKEAに「本当のサービス」をわかって実践してもらう必要性は本当にあるのだろうか?

 

話は少しそれるが以前、当ブログで日本人のサービスについての価値観について触れたことがある。

日本もチップ制の導入を考えてみたらどうだろうか - 異国見聞私書録

日本人はサービスついて「タダ」であるという価値観は根強く残っていると感じる。チップ制の導入というのはあくまで一例で、導入すれば明日から価値観が変わるとはとても思えないが、人件費の搾取とも言える「サービスはタダ」という悪しき習慣はどこかで断たなければならないと思う。良いサービスを受けたいのであれば、それなりの金額を支払うしか道はない。それがたとえ、ごく基礎的なサービスだとしても、ビジネス関係が成り立っている以上、なんらかの礼金は発生させるべきだと考える。そしてこれがビジネス上の緊張関係を生み、顧客とサービス提供者との間に甘えや馴れ合いを失くし、ほどよい「間合い」を作り上げていくことが期待できるのだ。またこうした「間合い」を伸張していけば、雇用者と被雇用者の関係にも適応していくことができるだろう。

それらの間合い関係が日常風景となったとき、本当の意味で行儀の悪い顧客や企業を減らして行けるスタート地点に立てるのではないだろうか。