異国見聞私書録

異国から見たこと感じたこと気になったこと。そして時折テクノロジーのお話。

寄付の習慣

突然だが、路上にホームレスがいたらあなたはどのような反応をするだろうか?

英国でホームレスに遭遇する率は高い。英国全体では30万とも40万人とも言われている。ロンドン近郊では特に多く、おおよそ3万人強と言われているが正確な数字は把握されていないようだ。

地下鉄駅でよく遭遇するのが、犬を連れたホームレスだ。彼らの連れている犬はほぼ例外なく大人しく、良くしつけられている雰囲気がある。そしてホームレスを思ってか、イギリス人の犬好きが昂じているのか、あるいはその両方なのか、寄付をしている光景をよく見かける。

寄付をしているだけではない。会話の内容まではわからないが、そのホームレスと親しそうに会話をし、労っているのか、寄付をしている方もされている方も実に楽しそうなのである。ちなみに寄付をしている方は明らかに仕事帰りのビジネスマン/レディといった人たちだ。

電車の中でも寄付の光景はよく見かける。それもホームレス自らが自分の現在置かれている状況を大きな声で説明し寄付を募るのである。曰く、仕事がない、食べるものがない、寝るところに困っている・・・・。その姿格好は決して身奇麗とは言えないが、声は明朗で透り抑揚もきいていて、何よりも堂々と前向きに寄付を募ろうとするその姿勢に圧倒される。そこまで前向きならば仕事はありそうなものであるが、そうでもないのが英国の現実なのであろう。また、ここでも寄付を行う乗客は少なくない。

こうした光景は決して表面上の東京では見られない光景であったので、はじめはかなり衝撃的だった。宗教や道徳観の違いから生じる「寄付習慣」なのかも知れないが、この日常的に、ごく普通に行われる寄附行為を自分の中でどう落とし込めばよいか、今だよくわからないでいる。

ホームレスや物乞いになる理由はさまざまだと思うが、不可抗力によりなる場合と、自己都合でなってしまう場合があると思う。前者の場合には寄付する理由も成り立つが、後者の場合には疑問が付きまとう。その見分けは散見しただけではつきようもなく、同一に寄付できるその心のありようがとても興味深い。

今度、一度寄付をしてみようと思う。どう自分の中で変化が現れるのか、または現れないのか。小さな変化があれば明日への糧とつなげてみたい。